スクワットで怪我の予防。スクワットスクリーニングで動作分析
スクワットは有名なだけではなく、動作分析にもとても役立つトレーニング種目です。
多くの関節を使って行う種目なので、各関節の役割が正常に働いているか、
スクワットの動作をみて、スクワット動作からどんな怪我のリスクがあるか考察できます。
スクワットの動作分析やスクリーニングの役割
- 怪我の予防
- 怪我のリスクを事前に認識する
- 適切なトレーニングプログラムを行う
スクワットとジョイントバイジョイント
まずスクワット動作の分析の前に押さえておきたい知識がjoint by joint theoryです。
joint by joint theoryはFMSのGray Cook氏が提唱している理論です。
機能的に動くための研究を理学療法士として行っている方で、機能的に動くには関節の役割の理解やモビリティファースト(可動を第一に!)と発信しています。
joint by joint theoryに戻ります。
関節(joint)の役割大きく分けるとモビリティ(可動)優位の関節とスタビリティ(安定)優位の関節に分けられます。
各関節の役割
肩関節 可動>安定
胸椎 可動>安定
腰椎 可動<安定
股関節 可動>安定
膝関節 可動<安定
足関節 可動>安定
可動性優位の関節の可動域不全があると本来安定させる役割の関節が動いて可動域の狭い動きを補ってしまいます。
これを代償動作と言いますが、本来は安定の役割がある関節が動いてしまうと傷害に繋がるリスクが増してしまいます。
例えば、肩関節や胸椎が硬いと腰椎で可動不全を補おうと代償動作が起こり、
必要以上に腰を反らせたり、捻ったりして腰椎の負担が増えて腰痛などに繋がる原因になり得ます。
股間節も同じです。
股関節の可動域不全で可動範囲が狭いと、必要以上に腰や膝に負担がかかります。
また女性に多いのは可動域は十分あっても関節の安定性の欠如して、腰など安定させる部分が必要以上に動いてしまうことでも肩こりや腰痛の原因になります。
スクワットは多くの関節を動員するトレーニング種目
スクワットは多くの関節を使います。
本来可動域の大きい肩関節と胸椎はバーベルでロックし、腰椎中心で上体を安定させます。
股間節や膝関節折り曲げて(屈曲)、足関節(足首)も曲がりすねと足の甲が近づいていきます(背屈)。
説明文や写真だと上体は主に固定し、脚の関節だけ動いているように見えますが、実際はバーベルスクワットでも肩関節や胸椎の可動域は大切です。
肩関節や胸椎の可動域が狭いと、
- 持ち手の幅が広がった状態になる
- 肘が後ろに突き出た状態になる
- 肩甲骨が上がったり開いたりしてバーベルを安定させて固定できない
肩甲骨の安定(ショルダーパッキング)が出来ていないとバーベルを担いだ時に腰を反らせてしまったり、
猫背の姿勢になってしゃがんだ時にバーベルの重さが脚や股関節・お尻に乗らず、腰に負担がかかってしまいます。
なのでバーベルを担いだ姿勢だけで関節の可動域が正常か考察できるのがスクワットなのです。
肩関節や胸椎の可動域が狭い方は無理に担いでスクワットせず、フロントスクワットやザーチャースクワットで行うのがオススメです。
また股関節が硬い人は、お尻を引いてしゃがむこと(ヒップヒンジ)が出来ずに、
- 膝が前に出てしまう
- しゃがんだ時に腰を丸めてしまう(バッドウィンク)
- 上体を前に倒してしまう
なので股関節の可動域が狭いと膝や腰の本来安定させる部分に負担がかかり、怪我に繋がってしまいます。
また足関節の可動域も大切なポイントです。
つま先を上に持ち上げる動作(背屈)が苦手だと、深くしゃがめません。
足関節背屈の可動域が狭いと、
- 深くしゃがめない
- しゃがんだ時に膝が前に出やすい
- しゃがんだ時に上体が前に倒れやすい
なので足関節の可動域が狭いと膝や上体を倒してしゃがんだ時に背骨(背中や腰)の部分に負担がかかり、怪我に繋がってしまいます。
スクワット前の事前チェック
スクワットで怪我をしないために、簡単に2つの動作でチェックして傷害リスクなくできるか確認しましょう。
まずは肩周辺のチェック。
①バックプレス(ビハインドネックショルダープレス)
【バックプレス(ビハインドネックショルダープレス)のやり方】
- バーベルを首の後ろに担ぐ
- 真っ直ぐ真上にあげる
- また担ぐ
5回ほど繰り返してみて、担いだ時や持ち上げる時に痛みがあれば、バーベルスクワットは一度やめましょう。
フロントスクワット、ザーチャースクワットの前で持つスクワットにしましょう。
またバックプレスは会話もできるくらい余裕が持てる軽めの重さで行いましょう。
バーベルが重い方はタオルなどでも大丈夫です。
大切なのは重さを持つことではなく、動作を行い痛みがないかを確認したいので無理せずチェックを行いましょう。
②立ち体前屈
【立ち体前屈のやり方】
- 直立姿勢から上体を床の方に倒す
- 手の指先が足の指を触れるもしくは床に触る
立ち体前屈で手の指が自身の足の指もしくは床に届かない場合は、
スクワットではなくランジやブルガリアンスクワットなどの種目に変更するのをお勧めします。
なぜなら立ち体前屈で指が床まで届かないということは、股関節もしくは脊柱の可動域不全が考えられます。
その状態でスクワットを行うと、
- 上体が前に出てしまって腰や背中を痛める
- 背骨周辺の筋肉を痛めてしまう
- 膝が前に出て痛めてしまう
以上の傷害リスクが考えられます。
なので脚のトレーニングは別の種目で行い、まずは股関節や脊柱の可動域改善を優先して、スクワットを行える状態にしましょう。
FMSとオーバーヘッドディープスクワット
より動作分析を細かく行いたい場合は、オーバーヘッドディープスクワット用いて行います。
FMS(functional movement screen)で7種目のスクリーニングで用いられている種目の1つです。
本来は7つのスクリーニングで点数化し、その点数を元に動作修正の改善エクササイズを行なっていくもので、
FMSではオーバーヘッドディープスクワットだけでは判断してはいけないと言われていますので、詳しく知りたい方は以下のリンクよりご確認下さい。(注:英語です)
FMS(functional movement screen)について
本来は1種目で判断してはいけないものですが、オーバーヘッドディープスクワットだけでも
- どの関節が原因でエラー動作が出ているのか
- どこの改善からするべきか
というのがバーベルスクワット以上に考察出来ます。
こちらの種目でのスクリーニングには基本的な機能解剖学の理解が必要です。
バーベルスクワットと何が違うのか?
バーベルスクワットとオーバーヘッドディープスクワットの違いは、
- 万歳した状態(肩関節屈曲)
- 一番深くまでしゃがむ(フルスクワット・ディープスクワット)
以上が大きく違うポイントです。
肩関節屈曲の最大可動域で動きのチェックができるところがバーベルスクワットとの違いです。
また1番深くまでしゃがむことで、股関節や足関節の可動性がバーベルスクワット以上に必要になります。
最大可動域になるので正しくオーバーヘッドディープスクワットを行うには、バーベルスクワット以上に関節可動域が必要になります。
オーバーヘッドディープスクワットのやり方
- 脚は肩幅に開きバーを持ちます
- 頭の真上にバーを持ち上げ、そのまま1番深くしゃがめるところまでしゃがみます。
オーバーヘッドディープスクワットの動作分析
オーバーヘッドディープスクワットの動作分析のポイントは以下になります。
- バーが頭上にない
- しゃがんだ時にバーが膝よりも前になる
→肩関節もしくは胸椎が硬い、股関節や足関節が硬くて状態が前に倒れてしまう
- 背中が丸くなる
- 背中が反り過ぎてしまう
→股関節周辺が硬い、脊柱の可動域不全、コアが弱く姿勢の維持が出来ない
他にも、
肘が曲がる
→肩甲骨周辺や背中の筋肉が硬い
しゃがめない
→足関節や股関節が硬い
左右差がある
→骨盤がずれている、重心のずれ、足部不安定
回旋してしまう
→股関節もしくは肩関節の捻れている、動作のクセ(同じスポーツを長くやっている方は多いです)
スクワットの動作分析で大切なこと
スクワットの動作分析やスクリーニングの役割
- 怪我の予防
- 怪我のリスクを事前に認識する
- 適切なトレーニングプログラムを行う
動作分析で考察することは自身のトレーニングやクライアントのトレーニング時の怪我の防止に役立ちます。
スクワットでもオーバーヘッドディープスクワットでも、その動作をみて一早く気付き対処することも大切です。
ですが、スクワットやオーバーヘッドディープスクワットだけで判断するのは良くありません。
それはFMSのGray Cook氏も言っています。
本来は7つのスクリーニングで評価した上で行います。
なのでスクワットで膝が前に出ているからと言って股関節が硬いと判断したり、
オーバーヘッドディープスクワットでバーが前に来ているから肩関節や胸椎が硬いと即決はしません。
スクワットで膝が前に出てしまうのは、脳の認識違いだったり、モデルさんのように脚がとても長く、
正常に動いても膝が前に出てしまうこともあります。
オーバーヘッドディープスクワットでもバーが前に来るから肩関節や胸椎が硬いとは一概に言えません。
股関節や足関節が硬くて上体を前に倒している可能性も高いからです。
動作分析は適切なトレーニングプログラムと怪我の予防のために
スクワットはいろんな関節を使う分、エラーが出やすい種目です。
自重では出てなくても、負荷がかかるとエラー動作が出てきたりします。
予め認識していれば痛めてしまった時の対処やエラーが出ないためのエクササイズや補強のトレーニングが出来ます。
また初めてトレーニングをやる人にBIG3(スクワット・デッドリフト・ベンチプレス)をまず勧める方もいますが、個人的には反対です。もちろんBIG3の種目が悪いわけではなく、パフォーマンス向上にも素晴らしい種目です。
BIG3の種目は、
- 重量を扱える分達成感がある
- 筋力向上に繋がる
- 多くの関節や筋肉を使うので、多くスポーツにも日常生活の向上にも推奨できる
このようにメリットもありますが、多くの関節を使うことや重量を扱える分、機能していない関節や筋肉(不活性筋)がある場合、活性筋により負荷がかかったり安定させる関節への負荷が増し、怪我のリスクが増えます。
BIG3をできる状態はベストですが、まずはBIG3ができる状態に体の機能を戻していくべきと思います。
また、個人に合わせてプログラムは組むべきと思います。
例えば、事故で右の股関節屈曲の可動域が狭くなっていて、体育座りも出来ない状態の方がいたら、バーベルスクワットの案内は検討した方がいいでしょう。
右の股関節可動不全を左に体を回旋させて補ったり、上体を倒して補い、鼠蹊部や腰・膝などに傷害が起こることが考えられます。
1つの種目での動作で何が悪いか、根本の原因を改善することは難しい。
それでもスクワットをしていておかしいところに気付き、考察して怪我の予防や疑わしい部分の補強トレーニングを案内できること、
適切なプログラムを組み、怪我なくパフォーマンス向上できるように、動作分析は必要です。
最後に大切なのでまとめとして『スクワットの動作分析やスクリーニングの役割』を三度目の掲載をして終わりになります。
まとめ:スクワットの動作分析やスクリーニングの役割
- 怪我の予防
- 怪我のリスクを事前に認識する
- 適切なトレーニングプログラムを行う
ビギナーフィットネスFIRST 山田光貴
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